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おんぱのさつじん
音波の殺人
野村 胡堂
「新青年」1936(昭和11)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,399 字 · 30 页
茶卓を挟んで腰をおろした、主人の長島博士も変って居ります。この薄寒い真夜中に、白いメリヤスらしいシャツ一枚、山羊髭の生えたミイラのような黒い顔と、こればかりは底の知れない、深い眼を此方へ向けて、催眠術使のように、ジッと千種十次郎の顔を見るのです。
「この器械は? 先生」
あまりの変った情景に押されるともなく、千種十次郎はツイこんな無駄口を訊くのでした。
「音響学の方から割出した、大変な器械だよ」
「何をするんです」
「君、テレミンというのを知ってるだろう、日本へも来たことがある。電気――二つの高周波振動電流を重ねて、思うままの音を出させる楽器だ、この原理を応用した電気振動にする楽器は、過去十年間に世界で二三十種発明されたよ、テレミン、ディナフォン、マルトウノ、ラジオフォネット、オンディオム、――皆同じようなものだ」
「あの、先生」
千種はこの講義を止めようとしましたが、学者らしい熱心と、気違い染みた調子で説いて行く、長島博士の雄弁の腰を折りようがありません。痩せて黒ずんだ博士の顔には、少し病的に見える興奮が燃えて、時間も相手も構わず饒舌り続けます。
「僕の発明したのは、この機械自体が一つの大管弦楽団の代りになるのだ、ほんの簡単な操作で、ベートーヴェンの大シンフォニーでも、バッハの大ミサでも何んでも聴かれるのだよ、