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おんぱのさつじん

音波の殺人

野村 胡堂

「新青年」1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,399 字 · 30 页

青空文庫

「焼け焦のある手巾などは、持って居なかったでしょう、――あの通り直ぐ警官が来て、部屋も身体も検べたが――」

「兎に角、近頃若菜が僕と親しくなるので、ひどく神経を立てて居た者のあることを記憶して下さい、――僕は若菜の敵を討ち度いという外に何んの巧みも無いんだから」

「――――」

早坂勇は爪を噛みました、警官へは言わずに、新聞記者の自分に言う真意が判らなかったのです。

丁度その時、疑が晴れて帰された鳥子も、夫の藤井薫と一緒に世間体だけの手伝いに来て居りましたが、顔見知りの千種十次郎に逢うと、

「ちょいと、相談に乗って下さいな、千種さん」

「何んだい、鳥子さん」

千種は誘わるるまま、裏庭に立って居りました。生垣と建物の蔭で、其処では誰にも聴かれ相にはありません。

「千種さん、私は本当に口惜しいワ――こんな疑まで受けて」

鳥子はポロポロ涙を流して居りました。二十五六の豊満な肢体から、憤怒と魅力が一ぺんに放散するような女で、狭い物の隅に押し付けられた千種は、何んか息苦しいような圧迫を感じます。

「私は若菜を怨んで居たには違いないけれど、あんな下等な女を殺して、私の首へ縄の付くような馬鹿なことはしない」