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おんぱのさつじん

音波の殺人

野村 胡堂

「新青年」1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,399 字 · 30 页

青空文庫

スタートの踏直し

それが多分、鳥子の本音だったでしょう。

「本当かそれは」

千種十次郎は急に熱心になりました。

「本当ですとも、私は眼が良いのが自慢なんです」

夫と若菜の連弾を覗いた鳥子、それ位のことを本当に見たのかも知れません。

「よし、それでは考え直そう、踏台さえ見付かれば此方のものだ、石でも、木でも」

「――――」

「窓は本当に開いて居たんだろうな」

と千種十次郎。

「若菜さんは熱がりで、ピアノや歌の稽古の時は、何時でも窓を開けますよ」

千種十次郎の顔は次第に真剣になります、早刻早坂勇から聴いた、岡崎の言うのが本当か、それとも鳥子の方が本当か、もう一度スタートを踏み直して考える必要があります。

スタートの踏直し

「勇、やり直しだ、少し手伝ってくれ」

暮れかかる夕陽を惜むように、千種十次郎は、新聞記者の控室から、早坂勇を誘い出しました。

「それは宜いが、――藤井薫が引かれて行ったぜ」

早坂勇はキョトンとして居ります。

「本当かい、それは」

「岡崎敬之助が告発したのさ、――俺に言った通りの事を言えば、警官は一応調べなければなるまい」

「仕様の無い奴だな」

「世間では若菜の愛が藤井から岡崎へ移りかけて居たように言うが、どうも、それは岡崎のデマらしいよ、藤井はあの通りの美男で、その上伴奏弾という武器を持って居るのに、岡崎と来た日にゃ、どう見ても三枚目