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かぜにのってくるコロポックル
風に乗って来るコロポックル
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,458 字 · 39 页
どこにいるか知らないかと云う。
そして、日に一度ずつは、頭の上に附いて歩いて喋るコロポックルを叱りながら、彼方の小山に登って、遙かな往還を眺めた。
毎日毎日同じように馬車が馳け、犬が吼(ほ)え、自転車がキラキラところがって行く。
イレンカトムは、その他の何物をも見出すことは出来なかったのである。
ところが、或る朝早く、彼が炉で麦を炊いていると、例の通り、遠くの遠くの方から、シュッ、シュワー、シュッ、シュワーというような響と共に、
コロポックル、コロポックル
コロポックル、アナクネ、トゥママ、タックネップネ
と唱いながら、ひどく沢山のコロポックルが風に乗って飛んで来た。
(コロポックル云々というのは、コロポックルという者は腰が短かい、という意味であるそうだ。)
そして、いつも通り男や女の声が、煩く喋り始めた。が平常のように、悪口や口真似ではなくて、今、Y岬へ義経の船が沢山攻めて来たから、早く出掛けて攻め返してやれ、と云うのである。
義経が攻めて来た?
そんなことが有るものか! と彼が云い返す。
すると、コロポックルは、それなら、論より証挙(しょうこ)だから、海岸まで出て見たら、好いじゃあないかと云う。