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かぜにのってくるコロポックル

風に乗って来るコロポックル

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,458 字 · 39 页

青空文庫

そこで成程と思ったイレンカトムは、仕舞って置いた弓矢を持って、ドシドシとY岬へ馳け付けた。

道もないような林や叢を、息せき切って馳けるイレンカトムの頭の上では、勿論コロポックルが、しきりに何とかかとか云い続けているのである。

Y岬まで出て見ると、成程、ほんとにそれらしい物が見える。

薄すりと靄(もや)の掛った海の磯近くに、五六艘の船がズラリと並んで、人の立ち騒ぐ様子さえ見えるのだからイレンカトムも、これはそうに違いないと思い定めた。

そして、飛鳥のように岬の端の端の、もう一足で海へ陥りそうな処まで出ると、弦を鳴らしながら、大声を張り上げて、呪を浴せ掛け始めた。

自分達の昔の祖先の宝庫から、書物や書く物を盗み去ったばかりか、また来て何か悪業をしようというのか! 神の戦士の六つの弓、六つの矢にかけてただでは決して逃すまいぞ!

というようなことを叫びながら、手を振り躍り上って戦いを挑んだ。

けれども、義経の軍勢は一向に注意を向けようともしないで、さっさと沖合へ漕ぎ出して行く。自分の挑戦が侮辱されたと思ったから、イレンカトムはすっかり腹を立てた。

白髪を振り乱し、自分の胸を撃ちながら荒れ廻っている……と、熱くなった彼の耳にフト、