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かぜしちだい

風七題

小川 未明

「子どもの村」1948(昭和23)年7月

N4 · 入门 · 新字新假名 · 2,377 字 · 5 页

青空文庫

三

けれども、兄さんは、帰ってきませんでした。

子どもは、かなしみをこらえて、田んぼの細道を、わが家の方へもどりました。

青田の上を、わたる風が、光の波をつくり、さっきの、きれいな人のまぼろしがうかぶと思うと、はかなく、きえてしまいました。

子どもは、口笛をならしました。

三

三人の子どもたちが、広い空き地で、遊んでいました。そこには、くるみの木、くりの木、かきの木、ぐみの木などが、しげっていました。

一人が、くるみの木へのぼって、ハーモニカをふきました。一人は、くりの木の下で、竹ざおをもって、かぶと虫をとっていました。もう一人は、ぐみの木のえだをわけて、熟した実をさがしていました。

このとき、ゴウッと音をたて、風が、おそいました。すると、とんぼが、うすい羽をきらめかしながら、ふきとばされてきました。

「やんまだぞう。」と、さおをもった、子どもが、さけびました。

空は、みどり色に晴れて、太陽は、みごとにさいた花のごとく、さんらんとかがやきました。

また、ひとしきり、風がわたりました。そのたびに、木々のえだが、波のごとくゆれて、ハーモニカの音も、きえたり聞こえたりしました。