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かぜしちだい
風七題
小川 未明
「子どもの村」1948(昭和23)年7月
N4 · 入门 · 新字新假名 · 2,377 字 · 5 页
六
だんだん、夜がふけると、どことなくしめっぽく、ひえびえとしてきました。畑では、つゆをしたって、うまおいが、ないていました。
「どれ、だいぶすずしくなったから、はいってねましょうか。」と、一人、立ちました。
「みなさん、おやすみなさい。」と、また、一人立ちました。
このとき、あちらの、黒い森の頭へ、ほんのりと白く、乳をながしたように、天の川が見えました。
六
昼ごろから、ふきはじめた風は、だんだん、暮れがたへかけて、大きくなりました。
「いよいよ、台風が、やってきたかな。」
「なんだか、頭のおもい日ですね。」
道をいく人の、こんな話し声が、耳へはいりました。
ぼくは、おとなりの正ちゃんと二人で、カチ、カチと、ひょうし木をたたいて、近所を、火の用心にまわりました。
もう、日がくれたのだけれど、ふしぎに、空は明るくて、けわしい雲ゆきが、手にとるように、見えました。
「この風は、南洋から、ふいてきたんだね。」と、ぼくが、いうと、正ちゃんは、立ちどまって、空をながめ、
「死んだ兄さんが、あの雲に乗ってこないかなあ。」と、いいました。
風は、間をおいて、ふきました。なまあたたかく、しめっぽくて、ちょうど、大きな海のため息のようでありました。