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ふうちそう
風知草
宮本 百合子
「文芸春秋」1946(昭和21)年9~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,107 字 · 88 页
「こんなにして、昼間、しずかに臥ていらっしゃると、しんから休まるでしょう?」
「たしかに、そういうところはあるね」
「世話するものがついていて、すこし工合をわるくして臥ているというようなきもちなんか、あなたとしてこんどがはじめてなのねえ」
そういうことのほかに、幾日も外出しないで重吉がうちにいるということは、ひろ子にとっていろいろの意味をもたらした。
自立会へ行った翌々日、卓の上に飾っていた牧子からの白い小菊の水をとりかえていると、臥ている重吉が、彼の公判に関係のある古い書類を出すように云った。
「在るんだろう?」
「それはとってあるわ」
そう云いながら、余りしまいこんでいて、その紙ばさみがなかなか見つからなかった。ベッドのしまってある奥の小部屋で、いくつもの包みの紐をといて見ているうちに、必要な書類が出るより先に、一つの大型ハトロン封筒が出た。裏に、文学報国会と紫のゴム印が捺されてある。封筒の中にはひろ子の小説をうつした原稿が入っていた。
見つかった書類と一緒に、ひろ子はその封筒をもち出した。そして、重吉の仕事が一段落ついたとき、
「こういうものが出たわ」