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ふうせんむし

風船虫

小川 未明

「児童文学」1936(昭和11)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,983 字 · 4 页

青空文庫

年ちゃんは、考えていました。

「おじさんのお家は、町の中にあるんだろう。子供たちは、どこで遊ぶの?」

「やはり、往来で遊んでいますよ。」

「おもしろい虫を今度捕らえてきてあげようか?」

「虫ですか? きりぎりすですか。」

「おじさんの知らない虫だよ」

「はて、なんという虫ですか?」

「風船虫というのだ。」

「ああ、風船虫なら知っていますよ。」と、おじさんは、笑いました。

「町の中にも、風船虫がいるの?」と、年ちゃんは、びっくりしました。

「私の家の近所に呉服屋さんがありましてね。毎夜ショーウインドーに燈火をつけますが、燈火の下へコップに水を入れておくと、風船虫が飛んできて入りましてね、紙片を上げたり、下げたりして、ひとりでに窓飾りになりますよ。そして、夜が明けると、どこへか飛んでいってしまいます。」と、おじさんは答えました。

「ふうん。」と、年ちゃんは、感歎したのでした。

いまさら、この自然の大きいということが、そして、小さな虫が、自由に、気ままに生活しているということが、なんとなく不思議に考えられたので、年ちゃんは、思わず、青い、青い、空を見上げたのでした。

昨日、水たまりに姿を映した白い雲が、今日は、あちらの高い木の上を飛んでいました。