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ふうせんむし

風船虫

小川 未明

「児童文学」1936(昭和11)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,983 字 · 4 页

青空文庫

原っぱは、烈しい暑さでしたけれど、昼過ぎになると風が出て、草の葉はきらきらと光っていました。昨日は、たくさん雨が降ったので、まだくぼんだところへ、水がたまっています。もうすこしばかり前でありました。

「きょうは、きっとよく釣れるよ。」といいながら、徳ちゃんは、釣りざおとバケツを持って先に立ち、後から、正ちゃんが、すくい網をかついでここを通ったのです。

年ちゃんは、毎日のように川へいくと、おばあさんにしかられるので、今日は、いっしょにいくのをやめたのでした。二人が、もう川へ着いた時分、年ちゃんは、原っぱへきて、お友だちをさがしていました。

「やあ、きれいだな。」と、年ちゃんは、水たまりのところに立ち止まって、大空の白い雲が下の水の面に映っているのをのぞいていました。

ちょうど、同じ時刻に、あちらには、誠くんが、さびしそうに独りで遊んでいて、年ちゃんを見つけると、

「年ちゃんおいでよ。おもしろいものがあるから。」といいました。

「なあに。」と、年ちゃんは、もはや雲のことなど忘れてしまって、その方へ駆けていきました。

「風船虫が、いるよ。」と、誠くんは、穴の中を指しました。