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ふうぼう
風貌
小山 清
――太宰治のこと
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,448 字 · 32 页
S君のような人の胸には、太宰治の作品が真っ直ぐに入っていくのであろう。太宰さんからはこんな葉書が来た。「S君と逢って下さったそうで、そうして、S君が素直な人だったそうで、何よりと思います。義務としてつき合わず、愛情が感ぜられたら、これからも、時たま遊んでやるといいと思います。私は、ひきつづき歯の療治で、ゆううつです。」S君とは時々逢っていたが、戦争末期に応召して、その後の消息は絶えた。
私は三鷹を訪ねて、太宰さんの家の近くのあの生籬のつづいている道に出ると、胸がどきどきし、うやうやしくなった。用意してきたはな紙を出してはなをかんだりした。なんべん訪ねても、慣れるということがなかった。その後独り留守番をするようになったとき、外出から帰ってきて、その辺りに来かかると、当時の自分のことが思われて、現在その家をわがもの顔に住み荒らしている自分がかえりみられたりした。芋食って破れかぶれの庵の留守。当時私はそんな生活をしていた。
私は太宰さんと会って、太宰さんの人柄が、またその生活が、作品と一枚のものであることを知った。太宰さんはまた非常に率直な人であった。