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しょくりょうめいい

食料名彙

柳田 国男

「民間傳承八卷二號~八號」1942(昭和17)年6月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,898 字 · 61 页

青空文庫

シラトリ

コシ

トモゲ

シラトリ 醤油の表面に浮ぶ白い黴を、上方ではシラトリまたはシラトという者が多い。関東から奥羽地方へかけてはこれをササミという。語原はわからぬがササミとシラトとはもと一つの語だったようである。きたない例だが虱をシラミ、その虫の子をキサザなどといい、東北では今でもシラミをシヤメと発音する人が稀でない。

コシ 鹿児島附近では黴も麹もともにコシといい、またいろいろの皮膚の病にもコシ・コセカキ・コシキヤマイという語がある。麹を今の仮名遣いでカウヂと書いているのは、最初からの名ではなかったかも知れぬ。各語それぞれの独立した起原は考えられぬからである。

トモゲ 岡山方言に、トモゲは麹の種のことだと報じている。トモはこの種を米にまじえると皆麹に化するから、仲間にするという意味で、トモという語も同じであろうが、ゲという語がまだ判らぬ。あるいはコウジの旧語であろうか。以前の麹作りは今よりも一段と神秘なもので、たとえば壱岐島のテモヤシのごとく(民間伝承一巻八号)、家はそれぞれの口伝があって、空中の酵母の自然に来たり着くに任せていた。従っていわゆるトモゲの経験は、食物文化の一つの進歩であった。