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きがちたいをあるく

飢餓地帯を歩く

下村 千秋

――東北農村惨状報告書――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,478 字 · 31 页

青空文庫

鉄道はなし、道路も山地の凸凹道で、トラックは勿論、馬橇もろくに通れない部落が多い。この地方は、水田が殆んどないので、平年でも、畑作もの、即ち、粟や稗を常食としているのだが、今年はその粟や稗も殆んど取れず、代用食であるシダミ(楢の実)トチの実もまたよく実らなかったというので、今唯一の食物は、わらびの根であるが、これにも限りあり、また雪が尺余に積れば、それを掘り取ることが出来なくなるので、この時になって、今言った交通不便のため、他所からの食糧運搬が不充分であったなら、彼等は文字通り餓死するのではないかと言われているのである。

私は、御堂村を訪ねた翌日の午後、二戸郡の小鳥谷村の山合いの部落へ入り、ある山裾にあった炭焼小屋の老爺と話したのである。

昨日降った雪が、山かげには、三四寸に積り、雑木山の地肌にはうす白い雪が敷かれて、あたりはひっそりとしていた。炭がまは、かやの屋根に蔽われ、その屋根のうしろの煙出しからは、浅黄色の煙がほうほうとこぼれ出て、傍の雑木の梢にからまりながら消えて行った。老爺は、かまの前の風穴の所にこっちりと縮まり、かまのぬくもりで暖まりながら、炭俵を編んでいた。