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もちのタタリ
餅のタタリ
「講談倶楽部 第六巻第一号」1954(昭和29)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,869 字 · 18 页
「一方は焼きたてだからのびる。冷えてしまえば、のびる筈がない」
「ツブを見てごらん」
「なに、冷えたからツブができたのだ」
「そんなバカな。じゃア私のも今に冷えるから、そのときツブがあるかどうか見てごらん」
「冷えたてはツブができない。こッちは一晩たってるからツブができたのだ」
「餅のことを知りもしないで、何を云うか」
「なんだと? 餅のことを知らないと? 知らない者に餅を見せて、なぜ証拠調べできるか。それでは証拠調べではなくて、皆を口先でだまして、証拠をごまかすコンタンであろう」
田舎の人というものは、論争の屁理窟の立て方に長じていて、それにまきこまれてしまうと正常の理窟は役に立たなくなってしまう。またその論争を聞く人々も自分の感情や意地にからんで手前流に判断するから、こうなると、助六に歩がない。一同はワアワアと立ち上って、
「そうだ。そうだ。杉の木は村の者を口でだますコンタンだ。自分だけ餅を知ってるようなことを云うが、そうは、いかねえぞ。オレは米をつくる百姓だ。五十八年も野良にでている百姓だぞ。餅のことぐらい知らないで、どうするか」
「そうだとも。オレは野良にでて六十三年になる。