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もちのタタリ
餅のタタリ
「講談倶楽部 第六巻第一号」1954(昭和29)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,869 字 · 18 页
要するにその食卓から新年を祝う気分を見ることはできなくて、むしろ一ツ年をとって死期が近づいたのをシミジミ観念して味っているような食卓なのである。
どうして新年にウドンを食うかということについては昔からいろいろ云われているが、いずれも納得できるものではない。むしろ、上州ばかりでなく、日本の諸地では昔から新年にウドンを食っていたのかも知れない。餅をくって門松をたてる風習の方が後にできてやがて日本中に流行してしまったのかも知れず、そのとき意地ッぱりの村があって、オレだけはウドンをやめないとガンバリつづけたのが今に残ったのかも知れない。上州にはそういう意地ッぱりの気風があるようだ。
さて、そういう村のあるところに、日当りのよい前庭に百坪もある円い池のある農家があった。その池には先祖からの鯉がいっぱい泳いでいて、それだけでも一財産だと云われているほどの池だから、この家はいつのころからか円池サンという通称でよばれるようになっていた。
年の暮も押しつまって明日は新年という大晦日の夜更けに、円池の平吉という当主が便所に立ったところ、その晩はカラッ風のない晩で、そういうときのシンシンとした寒さ静けさはまた一入なものだ。