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もちのタタリ

餅のタタリ

坂口 安吾

「講談倶楽部 第六巻第一号」1954(昭和29)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,869 字 · 18 页

青空文庫

アレ。ビクの中にエサのネリ餌があらア。するとこの手ヌグイ包みは何だろうな」

電燈の下にひろげてみると、矩形の変にやわらかな焼いた物だ。

「こりゃア餅じゃアないか」

「そうだわ。焼いた餅だわ」

「してみるてえと、魚のエサじゃアなくて、泥棒のエサだな。これを食いながらノンビリ鯉をつるつもりだったんだなア。泥棒を遊山と心得てやがる」

「ですが、新年のお餅でしょうから、この村の人じゃアありませんね。村の者はこんな悪いことはしませんよ」

「なるほど、そうだ。この村の者は新年に餅なんぞ食いやしねえな。だが、まてよ。フム。泥棒は、わかったぞ。あの野郎ときまった。ふてえ野郎だ」

「誰ですか」

「杉の木の野郎だよ。この村に、新年に餅を食う変テコな野郎は一人しかいない。あの野郎め、オレの鯉で餅の味をつけようてえ寸法だな」

「村の人を疑っちゃいけないわ。杉の木さんはお金持でしょう」

「ケチンボーではこの上なしの奴だ。みろよ。お弁当の餅といえば、ノリをまくとか何とか味をつけるものだ。この餅は焼いただけで味なんぞつけてやしないや。あのケチンボーめのやりそうなことだ。餅を食う奴にろくな奴はいやしない。