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きょうおうふじん

饗応夫人

太宰 治

「光」1948(昭和23)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,914 字 · 13 页

青空文庫

から、私に対しては、みな一様に顔をそむけ、やがて、元気の無い腐った魚のような感じの恰好で、ぞろぞろ帰って行きました。

「奥さま、なぜあんな者たちと、雑魚寝なんかをなさるんです。私、あんな、だらしない事は、きらいです。」

「ごめんなさいね。私、いや、と言えないの。」

寝不足の疲れ切った真蒼なお顔で、眼には涙さえ浮べてそうおっしゃるのを聞いては、私もそれ以上なんとも言えなくなるのでした。

そのうちに、狼たちの来襲がいよいよひどくなるばかりで、この家が、笹島先生の仲間の寮みたいになってしまって、笹島先生の来ない時は、笹島先生のお友達が来て泊って行くし、そのたんびに奥さまは雑魚寝の相手を仰せつかって、奥さまだけは一睡も出来ず、もとからお丈夫なお方ではありませんでしたから、とうとうお客の見えない時は、いつも寝ているようにさえなりました。

「奥さま、ずいぶんおやつれになりましたわね。あんな、お客のつき合いなんか、およしなさいよ。」

「ごめんなさいね。私には、出来ないの。みんな不仕合せなお方ばかりなのでしょう? 私の家へ遊びに来るのが、たった一つの楽しみなのでしょう。