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くびきりもんどう
首切り問答
佐々木 邦
「日の出」新潮社、1935(昭和10)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,332 字 · 17 页
張合のない本懐
「よし。手紙を出して置こう」
「頼む」
「名校長という評判を聞いたら、君は諦めるのが本当じゃあるまいか? 名校長が無暗に首を切る筈はない」
「すると僕が切られたのは当然だと言うのかい」
「先ずその辺だろう」
「文句はあるけれど、喧嘩はしない。手紙を書いて貰うんだから」
「何うも君は合点の行かない人間だ。他のことは公明正大の判断を誤らないけれど、この問題になると理性を失う。君は大友氏によりて発憤して、今日あると思わないか?」
「思わないよ。今日とは何だ? 貴様は地方事務官が中学校の教諭よりも豪いと思っているのか?」
「その通りだ。直ぐに理性を失って、貴様呼ばわりをする」
「大友があんな処置を取らなければ、僕は教育者としてもっと好い仕事をしているんだ」
「好い仕事の貴いことが分っているなら、大友氏を尊べ」
「忌々しい野郎だ」
「何うかしているよ、君は。雅量に乏しいんだね」
「貴様は雅量がある。忌々しい野郎だと言われて、人のことだと思っているんだから」
「それじゃもう手紙を書かない」
「頼む。おれが悪かった」
張合のない本懐
その頃、僕は中国、野口君は宮崎、何方も地方課長まで漕ぎつけていたから、もう一息のところだった。