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くびきりもんどう
首切り問答
佐々木 邦
「日の出」新潮社、1935(昭和10)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,332 字 · 17 页
僕の親分というのは官僚の親玉だ。これにも紹介してやった。野口君はその後上京毎に僕の家を宿にした。僕はもう世帯を持っていた。しかし野口君が諷したように閨閥って程のこともない。前任地の知事の娘を貰ったのである。野口君こそ閨閥だった。同じことなら背景の好いのをと思って念を入れたのか、僕よりズッと後れて結婚した。郷党の先輩で財界の有力者に見込まれて、その令嬢を頂戴したのである。有力者と縁を組むから出世が早いと一口に言うけれど、単に蔓にばかりよるものでない。此方が有力な秀才なればこそ、有力者が相手にしてくれる。有力者から嫁を貰うことは元来の有力を証明している。野口君の場合は正にそれだった。式を東京で挙げたけれど、僕は生憎チブスに罹って入院していた。しかしもう肥立ちになっていたから、野口君はお礼廻りの序に見舞ってくれた。
「命拾いをしたね」
「お蔭で。ところでお芽出度う。こんな次第で悉皆失敬してしまった」
「お祝いを有難う。妻も門まで来ている」
「お目にかゝりたいな」
「よせよ。そんな地獄から火を取りに来たような顔をして」
「相変らず厳しいね」
「家へ寄って、奥さんに引き合せて来た」