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こうでん
香奠
豊島 与志雄
「時流」1925(大正14)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,989 字 · 46 页
それでもどうやら下宿まで辿りついて、一晩寝ていると、翌日は気分がいいので、方々出て歩いて――何だか出て歩かずにはいられなかったそうです――その夜中から、ひどい衝心に襲われたのです。
妻が行った時は、彼は頻繁に襲ってくる呼吸困難に、うんうん呻ってたそうです。それなのに、胸部に氷嚢もあててないんです。その朝やって来た医者は、静に寝ていればなおるだろうと云っていったそうです。でも余りお苦しそうだからお知らせしました、とお上さんは平気でいたそうです。妻は余りのことにあきれ返ったのです。そして一人で騒ぎ立てました。氷や氷嚢を買って来て貰ったり、知り合いの医学士に来て貰ったり、看護婦をたのんで酸素吸入をさしたり、出来るだけのことはしたそうですが、もう手後れだったのです。電話を聞いて私がやっていった時には、彼は胸に波打たして※(「足へん+宛」、第3水準1-92-36)き苦しんでいました。私はすぐに彼の伯父へ電報をうちました。然しそれも間に合わなくなって、彼はその夜中に冷くなってしまいました。
この前後のことは、彼の伯父と母親とから詳しく御聞き及びだと思いますから、茲に再びくり返すのを止しましょう。