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えきふにっき

駅夫日記

白柳 秀湖

「新小説」1907(明治40)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,989 字 · 69 页

青空文庫

見送ってぼんやりと佇んでいると足立駅長が洋服に蛇の目の傘をさして社宅から来かけたが、廊下に立ってじっと私の方を見ていた。雨垂れの音にまぎれて気がつかなかったが、物の気配に振り向くとそこに駅長が微笑を含んでいた。

今の白銅は私が夕飯のお菜を買うために持っていたので、考えて見ると自分の身に引き比べて何だか気羞かしくなって来た。コソコソと室に入って椅子によると同時に大崎から来た開塞の信号が湿っぽい空気に鳴り渡った。乗客は一人もない。

十

雨がやむと快晴が来た。

シットリと濡れた尾花が、花やかな朝日に照りそうて、冷めたい秋風が一種言いしれぬ季節の香を送って来る。崖の上の櫨はもう充分に色づいて、どこからとなく聞えて来る百舌鳥の声が、何となく天気の続くのを告げるようである。

今日は日曜で、乗客が非常に多い。午後一時三十五分品川行きの列車が汽笛を鳴らして運転をはじめたころ、エビスビールあたりの帰りであろう、面長の色の浅黒い会社員らしい立派な紳士が、眼のあたりにポッと微薫を帯びて、洋杖を持った手に二等の青切符を掴んで階壇を飛び降りて来た。

「危険! もうお止しなさい※ 駄目です駄目です!」