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えきふにっき
駅夫日記
白柳 秀湖
「新小説」1907(明治40)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,989 字 · 69 页
見れば根っから乞食の児でもないようであるのに、孤児ででもあるのか、何という哀れな姿だろう。
「おい、冷めたいだろう、そんなに濡れて、傘はないのか」
「傘なんかない、食物だってないんだもの」といまだ水々しい栗の渋皮をむくのに余念もない。
「そうか、目黒から来たのか、家はどこだい父親はいないのか」
「父親なんかもうとうに死んでしまったい。母親だけはいたんだけれど、ついとうおれを置いてけぼりにしてどこかへ行ってしまったのさ、けどもおらアその方が気楽でいいや、だって母親がいようもんならそれこそ叱られ通しなんだもの」
「母親は何をしていたんだい」
「納豆売りさ、毎朝麻布の十番まで行って仕入れて来ちゃあ白金の方へ売りに行ったんだよ、けどももう家賃が払えなくなったもんだから、おればっかり置いてけぼりにしてどこかへ逃げ出してしまったのさ」
「母親一人でか?」
「小さい坊やもつれて!」
「どこに寝ているのか」
「昨夜は大鳥様へ寝た」と権之助坂の方を指さして見せる。
私はあまりの惨ましさに、ポケットから白銅を取り出してくれてやると少年は無造作に受け取って「ありがとう」と言い放つとそのまま雨を衝いて長峰のおでん屋の方に駆けて行ってしまった。