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がいこつのくろんぼ
骸骨の黒穂
夢野 久作
「オール読物」1934(昭和9)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,160 字 · 28 页
イザといえば直ぐにも飛掛りそうな身構えで、低い、狭い潜戸を開けてやると、女は直ぐに這入って来た。
十九か二十歳ぐらいの見るからに初々しい銀杏髷の小柄な女であった。所謂丸ボチャの愛嬌顔で、派手な紺飛白の袷に、花模様の赤前垂、素足に赤い鼻緒の剥げチョケた塗下駄を穿いていた。
銀次は張合いが抜けたように、その姿を見上げ見下した。
小女は美男の銀次に見られて真赤になってしまった。背後に隠していた一升徳利と十円札を銀次の鼻の先に差出しながら、消え入るように云った。
「お酒を一升。一番ええとこを……」
銀次が無言のまま頭を下げてお金と徳利を受取ると、小女はよろめくように潜戸の端に凭りかかって頸低れた。
銀次は新しい酒樽からタップリ一升引いて小女に渡した。それからラムプをグッと大きくして、押入の端の小箪笥の曳出しから黄木綿の財布を引っぱり出して、十円のお釣銭を出してやった。
「姉さん、どこから来なさったとな」
と顔をさし寄せて訊いてみたが、小女はチラリと上目づかいに銀次の顔を見たきり、首の処まで真赤になってしまった。無言のまま逃げるように潜戸の外へ辷り出てしまった。