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こうげん

高原

木暮 理太郎

「山」1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,921 字 · 10 页

青空文庫

言葉を換えていえば、左右両側は、断崖なり急斜面なり、又は深い沢或は平野でもよい、其等に依って絶縁されていることが望ましい。よしそれ程でなくとも、兎に角高い処に居るぞと一目で納得出来ないと安心されない。四周に高山を擁していることは苦痛ではなく、位置の高いことを端的に知り得ないのが苦痛なのである。然るに多くの高原は、裾野若しくは山懐ともいう可き処に位置を占めているので、この要求を充たしてくれる場合が少ないのは、所謂自縄自縛であっても、遺憾はどこまでも遺憾である。

高原から受ける感じは、うち寛いだ平和な安息の気持であり、多かれ少なかれ自由奔放の気持も交っている。これは平地の営みと登山の努力とに対して、当然起る感じであろう。私は夫れと共に高原も亦山の一部であるとの考から、場所の優越感にも浸りたいのである。そしてこの最後のものが最も強く私の感情を支配していることを白状する。

遠望して美しいと感じた高原でも、近寄って見ると案外に平凡であることがあり、其中を歩いて美しさにうたれた高原でも、遠望には極めて平凡にしか映らないことがある。両者を兼ね備えていれば申分ない。