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こうげん

高原

木暮 理太郎

「山」1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,921 字 · 10 页

青空文庫

四

けれども附近の排泄物を見て、それが牛や馬であることを知ると共に、ここも牧場であったのかと嘆ぜざるを得なかった。私は高原が牧場となることを好まない、勿論美しい高原に悠々と牛馬の起臥しているさまや、自由に馳駆している奔放なさまは、高原の景趣を一層平和に一層雄大ならしめ、いやが上にも感興を高めることのあるのは疑う可くもないが、小屋を建て柵を廻らし、異臭原上を掩い、虻群や刺蠅群の大襲来を蒙るに至っては、ひたすら息をころし、両手を振って逃げ出すに如かざるを思わしめる。高原も山と同じく能う限りはわれずに原始のままであらせたい。美ヶ原は私の最も好きな高原の一であるが、目障りになる柵や見窄らしい番小屋などの建てられないのがせめてもの慰めである。霧ヶ峰は如何にも高原らしい高原であるが、わがもの顔に原の大部分を占領している薄が少し気にかかる。

四

高原の地勢に関しても亦私は囚われたる心の持主であることを否めないほど、高さのわかり易い地勢を要求している。たとえあたりの状況から察して、千米以上の標高を有することが明かであっても、それだけでは満足し得ないのである。地勢がそれを証明して欲しいのである。