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たかおざんげ
高尾ざんげ
豊島 与志雄
――近代説話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,252 字 · 21 页
その上、北京行きの手当の金の一部を、既に彼は受け取っていまして、それは返還の仕方がない事情にありました。なお、多量のウイスキーまで分与されていました。それらのものを、彼は杉茂登で消費にかかったのでした。――そういうことを、檜山はしみじみと語りました。
「君によく分るまいけれど、男の世界というものは、浅間しいものさ。」
「そうでもないわ。檜山さんのお気持ち、立派だったと思うわ。」
「どこが立派だい。ばかばかしい。金はもう殆んど使ってしまったが、酒はまだ残ってるらしい。使いはたし、飲みつくして……。」
「それから、どうなさるの。」
「それが、危いものさ。」
気弱に言いながら、檜山は眼鏡の奥からへんに眼をぎらぎら光らして、菊千代を見つめました。毒気……とも言えるものを菊千代は感じて、ちょっと身を退きかけましたが、瞬間、別な力に引き戻される心地で、それを、ウイスキーの瓶に踏み止めました。
「そんなら、飲んでおしまいなさいよ。あたしもすけてあげるわ。」
「飲めなかったら、打ち割るまでさ。」
床の間に、花は活けずにただ青銅の花瓶が置いてありました。それをめがけて、檜山は酒瓶を振りあげました。