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たかおざんげ

高尾ざんげ

豊島 与志雄

――近代説話――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,252 字 · 21 页

青空文庫

」

「よかろう。約束しよう。」

そして、二人は握手をしましたが、菊千代は寒そうに肩をすくめ、檜山はまた溜息をつきました。

足がかりの話が、いつしか、二人の心の繋がりともなっていました。――檜山は荒れてるという友人間の説が、菊千代にはどうもぴったりこず、檜山さんはただ足をしっかり踏みしめることが出来ないでいるのだ、と感じました。菊千代自身、いくらかそういう状態でした。そして彼女は、むかし、朋輩に誘われて、山王下のスケート場に遊びに行った頃のことを思い出しました。おずおずと、手摺につかまったり、友の手につかまったりして、氷の上を歩いているうちは、まだよかったのですが、独り立ちで滑りはじめる段になると、全然見当がつかなくなりました。足だけが軽く、上体がいやに重く、前後左右いずれへか引っくり返って気絶をするか、或は急速に真鍮の手摺りまで持ってゆかれて大怪我をするか、とにかく無事にはすみそうにありませんでした。リンクの中を燕のように飛んだり舞ったりしてる人々の弧線の中に、彼女は呆然として、両手をついてしまいました。その最初の、危い足で突っ立ってた時の状態、それを彼女は檜山さんにあてはめてみたのでした。