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おに

鬼

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年11月、1932(昭和7)年1月~2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,138 字 · 60 页

青空文庫

のっぴきならぬ確証が上ったのだ。

間もなく、調べ室のテーブルの前には、大宅幸吉が呼び出され、昨日と同じ様に国枝判事と対坐していた。

「本当のことを云って下さい。あの日君はN市へなぞ行かなかったのでしょう。仮令行ったとしても、七時までには村へ帰って、それからずっと村内のどこかにいたのでしょう。君があの夜帰宅したのは十二時頃だというから、それまで、どこかお宮の境内とか、森の中とかで過したのでしょう」

予審判事は昨日と違って、確信に充ちた態度で、落ちつき払って取調べを始めた。

「何度お尋ねになっても同じことです。僕はN市から真直に徒歩で帰宅したのです。お宮や森の中にいる筈がありません」

幸吉は、平然として答えたが、青ざめた顔色に、内心の苦悶を隠すことは出来なかった。彼は已に予審判事の握っている証拠物件に気附いていたからだ。そののっぴきならぬ証拠を、如何に言い解くべきかと、心を千々に砕いていたからだ。

「アア、君にお知らせして置くことがあったのです」判事は全く別のいとぐちから入って行った。

「鶴子さんは細身の刃物で心臓をやられていたのです。多分短刀でしょう。つい先程、解剖の結果が分ったのです。