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おに

鬼

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年11月、1932(昭和7)年1月~2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,138 字 · 60 页

青空文庫

「積んでました。材木を積んだ無蓋貨車が、確か三台あった筈です」

「で、その貨物列車は、次のU駅には停車することになっているのですか」

Uというのは、S村とは反対の方角にある、N市の次の停車場なのだ。

「エエ、停車します。Uではいくらか積卸しがあった筈です」

それ丈け聞き取ると、殿村は駅を走り出して、駅前の自動電話に飛込み、U町の郊外にある、有名な高原療養所を呼出して、何か入院患者のことをしきりと尋ねていたが、これも満足な答えが得られたと見え、通話が終ると、そのまま、勢い込んで警察署へと駈つけた。

国枝氏は署長室にただ一人、ぽつねんと腰かけていたが、突然殿村が取次もなく飛び込んで来たので、あっけにとられて立上った。

「殿村君、君の酔狂にも困るね。お上のことはお上に任せて置き給え。小説家の俄刑事なんかが成功する筈はないのだから」

国枝氏は苦り切て、きめつけた。

「イヤ、俄刑事であろうと何であろうと、この歴然たる事実を知りながら、黙っているのは、寧ろ罪悪だ。僕は真犯人を発見したのだ。大宅君は無罪だ」

殿村は昂奮の余り、場所柄をもわきまえず絶叫した。

「静かにしてくれ給え。