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おに
鬼
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年11月、1932(昭和7)年1月~2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,138 字 · 60 页
真犯人
信用出来なかったら、予審判事としてでなく、一個人として行けばいい。仮令僕の推理が間違っていた所で、ホンの二時間程浪費すれば済むのだ」
押し問答を続けた末、結局、国枝氏は旧友の熱誠にほだされ、謂わば気違いのお守りをする気で、療養所へ同行することになった。無論警察の人々にはそれと云わず、一寸私用で出掛ける体にして、自動車の用意を頼んだ。
真犯人
高原療養所へは、国道を飛ばして、四十分程の道のりだ。雪子の家を家探しして一時間以上つぶしたのと、国枝判事を説きつける為に手間取ったので、彼等が療養所へ着いたのは、もうおひる過ぎであった。
療養所は駅の少し手前、美しい丘の中腹に、絵の様に拡がっている白堊の建物だ。車を門内に入れて、受附けに来意をつげると、直様院長室に通された。
院長の児玉博士は、専門の医学の外に、文学にも堪能で、殿村などとも知り合いであったから、さい前殿村からの電話を聞いて、彼等の来るのを待ち受けていた程である。
「さっき電話で御尋ねの人相の婦人は、北川鳥子という名で入院してますよ。御言葉によって、それとなく見張りをつけて置きました」
挨拶がすむと院長が云った。