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まぞう
魔像
林 不忘
新版大岡政談
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页
淡路守は、ますます苦笑の皺を深めて、
「さては、お頼まれなされた――」
山城守、これにはグッ! と来たらしく、人間、ほんとのことを言われると腹の立つもので、
「ココ、これは異なことを!」
淡路守のほうへ膝を捻じ向けると、相手の淡路は、端然と袴の膝へ手を置いて涼しい顔だ。
「頼まれた――と申したが、お気にさわりましたかナ。頼まれもせで、油御用が何家へ行こうと、何屋に下命されようと、左様な小事、何もかく御老役列座の席へ持ち出されいでも……」
「小事? なるほど、高がお油のことと申せばそれまでじゃが、かりにもお城の御用を、小事とは何事――イヤサ、小事とは何ごと――!」
「あアン! 何が障子じゃ? 年は老りとうない。魚が泡を吐いとるようで、さっぱり聞えぬ。何じゃイ、あアン?」
近藤相模守は、どこまでも金つんぼを装って、両手を耳のうしろへ立てて、せかせかと膝を進めた。
またちょっと、シインと座が白け渡っている。
二
中の間である。
大目附お目附の詰所で、太い柱が立っている。片方は二間二枚のお杉戸、この一枚はしじゅう開いていたもので、縁のそとは箒目をみせたお庭土、ずウッと眼路はるかにお芝生がつづいて、木石の配合面白く、秋ながら、外光にはまだ残暑をしのばせる激しいものがある。