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ぎょげんき

魚玄機

森 鴎外

「中央公論」1915(大正4)年7月

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 9,866 字 · 20 页

青空文庫

難得有心郎。

枕上潜垂涙。   花間暗断腸。

自能窺宋玉。   何必恨王昌。

采蘋は体が小くて軽率であった。それに年が十六で、もう十九になっている玄機よりは少いので、始終沈重な玄機に制馭せられていた。そして二人で争うと、いつも采蘋が負けて泣いた。そう云う事は日毎にあった。しかし二人は直にまた和睦する。女道士仲間では、こう云う風に親しくするのを対食と名づけて、傍から揶揄する。それには羨と妬とも交っているのである。

秋になって采蘋は忽失踪した。それは趙の所で塑像を造っていた旅の工人が、暇を告げて去ったのと同時であった。前に対食を嘲った女等が、趙に玄機の寂しがっていることを話すと、趙は笑って「蘋也飄蕩、也幽独」と云った。玄機は字を幼微と云い、また蘭とも云ったからである。

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趙は修法の時に規律を以て束縛するばかりで、楼観の出入などを厳にすることはなかった。玄機の所へは、詩名が次第に高くなったために、書を索めに来る人が多かった。そう云う人は玄機に金を遣ることもある。物を遣ることもある。中には玄機の美しいことを聞いて、名を索書に藉りて訪うものもある。