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ぎょげんき

魚玄機

森 鴎外

「中央公論」1915(大正4)年7月

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 9,866 字 · 20 页

青空文庫

楼上遠山明。

珍簟涼風到。 瑶琴寄恨生。

君懶書札。 底物慰秋情。

玄機は詩筒を発した後、日夜温の書の来るのを待った。さて日を経て温の書が来ると、玄機は失望したように見えた。これは温の書の罪ではない。玄機は求むる所のものがあって、自らその何物なるかを知らぬのである。

ある夜玄機は例の如く、燈の下に眉を蹙めて沈思していたが、漸く不安になって席を起ち、あちこち室内を歩いて、机の上の物を取っては、また直に放下しなどしていた。やや久しゅうして後、玄機は紙を展べて詩を書いた。それは楽人陳某に寄せる詩であった。陳某は十日ばかり前に、二三人の貴公子と共にただ一度玄機の所に来たのである。体格が雄偉で、面貌の柔和な少年で、多く語らずに、始終微笑を帯びて玄機の挙止を凝視していた。年は玄機より少いのである。

感懐寄人

恨寄朱絃上。 含情意不任。 早知雲雨会。

未起蘭心。 灼々桃兼李。 無妨国士尋。

蒼々松与桂。 仍羨世人欽。 月色庭階浄。

歌声竹院深。 門前紅葉地。 不掃待知音。

陳は翌日詩を得て、直に咸宜観に来た。玄機は人を屏けて引見し、僮僕に客を謝することを命じた。玄機の書斎からはただ微かに低語の声が聞えるのみであった。