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ぎょげんき

魚玄機

森 鴎外

「中央公論」1915(大正4)年7月

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 9,866 字 · 20 页

青空文庫

初夜を過ぎて陳は辞し去った。これからは陳は姓名を通ぜずに玄機の書斎に入ることになり、玄機は陳を迎える度に客を謝することになった。

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陳の玄機を訪うことが頻なので、客は多く卻けられるようになった。書を索めるものは、ただ金を贈って書を得るだけで、満足しなくてはならぬことになったのである。

一月ばかり後に、玄機は僮僕に暇を遣って、老婢一人を使うことにした。この醜悪な、いつも不機嫌な媼はほとんど人に物を言うこともないので、観内の状況は世間に知られることが少く、玄機と陳とは余り人に煩聒せられずにいることが出来た。

陳は時々旅行することがある。玄機はそう云う時にも客を迎えずに、籠居して多く詩を作り、それを温に送って政を乞うた。温はこの詩を受けて読む毎に、語中に閨人の柔情が漸く多く、道家の逸思がほとんど無いのを見て、訝しげに首を傾けた。玄機が李の妾になって、幾もなく李と別れ、咸宜観に入って女道士になった顛末は、悉く李の口から温の耳に入っていたのである。

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七年程の月日が無事に立った。