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かいじんじゅうまんかん
魯庵の明治 山口昌男、坪内祐三編
内田 魯庵
内田魯庵『魯庵の明治 山口昌男、坪内祐三編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:灰燼十万巻、文明国には必ず智識ある高等遊民あり、駆逐されんとする文人、二十五年間の文人の社会的地位の進歩。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,671 字 · 55 页
小生は文学論をするツモリで無いから文学其物に就ては余り多くを云うを好まぬが、二十五年前には道楽であった文学が今日では職業となり、最早袋物屋さん下駄屋さん差配人さんを理想としないでも済むようになった事実を見て、職業としての文学が最う少し重くなければならぬ。文人の社会的地位が今一層高くなければならぬ事を痛切に感ずる。
有体に言うと今の文人の多くは各々蝸牛の殻を守るに汲々として互いに相褒め合ったり罵り合ったりして聊かの小問題を一大事として鎬を削ってる。毎日の新聞、毎月の雑誌に論難攻撃は絶えた事は無いが、尽く皆文人対文人の問題――主張対主張の問題では無い――であって、未だ嘗て文人対社会のコントラバーシーを、一回たりとも見た事が無い。恐らく之は欧洲大陸に類例なき日本の文壇の特有の現象であろう。文人としての今日の欲望は文人同志の本家争いや功名争いでなくて、今猶お文学を理解せざる世間の群集をして文人の権威を認めしむるのが一大事であろう。
二十五年前と比べたら今日の文人は職業として存立し得るだけ社会に認められて来た。が、人生及び社会を対象とする今日以後の文人は、昔の詩人のように山林に韜晦する事は出来ない。