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かいじんじゅうまんかん
魯庵の明治 山口昌男、坪内祐三編
内田 魯庵
内田魯庵『魯庵の明治 山口昌男、坪内祐三編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:灰燼十万巻、文明国には必ず智識ある高等遊民あり、駆逐されんとする文人、二十五年間の文人の社会的地位の進歩。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,671 字 · 55 页
駆逐されんとする文人
▲余の住ってる町は以前は組屋敷らしい狭い通りで、多くは小さい月給取の所謂勤人ばかりの軒並であった。余の住居は往来から十間奥へ引込んでいたゆえ、静かで塵埃の少ないのを喜んでいた。処が二三年前市区改正になって、表通りを三間半削られたので往来が近くなった。道路が広くなって交通が便利になったお庇に人通りが殖えた。自働車が盛んに通るようになった。自然商店が段々殖えて来て、近頃は近所の小さな有るか無いかのお稲荷様を担ぎ上げて月に三度の縁日を開き、其晩は十二時過ぎまでも近所が騒がしい。同時に塵埃が殖えて、少し風が吹くと、書斎の机の上が忽ちザラ/\する。眺望は無い方じゃ無いが、次第にブリキ屋根や襁褓の干したのを余計眺めるようになった。土地の繁昌は結構だが、自働車の音は我々を駆逐する声、塵埃の飛散は我々を吹払う風である。
▲文明とは物質生活の膨張であって、同時に精神生活の退縮である。文明を呪う声が精神生活の側から生ずるのは当然である。
▲或る人が来て、世間の人は電車が出来て便利になったというが、我々は電車のお庇で辺鄙が賑かになって家賃が騰るので、延長する度毎に段々遠くへ転さなくてはならないから、電車の出来たのが却て不便だと云った。