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さぎむすめ
鷺娘
大倉 燁子
「宝石 一巻四号」1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,370 字 · 21 页
「あれっ!」女の子は飛び上るほど驚いた。そのはずだ、舞台で踊っているのも百合子、楽屋にいるのも百合子、二人の百合子を同時に見たのだから。
百合子は人差指を唇にあて、
「云うときかないよ、殺しちゃうから」
そこに落ちていた小道具の短刀を突きつけて威した。
恰度その時、舞台ではまゆみが火焔模様の襦袢になって踊っているところだった。百合子はくろごを着て幕溜りから覗いていた。うまいな、うまいもんだな、と思うと同時にむらむらと嫉しくなった。胸が裂けるような気がした。憎い! じいっと睨んでいると、どうしたのかまゆみは急に眉をしかめ、苦しそうな表情をした。
鷺娘は大成功だった、場内を揺り動かすような拍手の中に幕となった。
百合子の母は客席から楽屋へ飛んで来て、家元に礼を云った。家元は今日の出来栄の見事さを褒めぬいた。百合子は擽ったくて居たたまれず早々逃げ出して、客席の方を眼で探すと、約束通りまゆみはいつか洋装に着換えて、彼女を招いていた。
「百合ちゃん、困った事が出来たわよ。見物席に竹村さんが来ていたのよ、はっと思ったら、よろけて釘を踏んじゃった、素足だからね、ずぶりとささった。