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さぎむすめ

鷺娘

大倉 燁子

「宝石 一巻四号」1946(昭和21)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,370 字 · 21 页

青空文庫

5

苦しかったけれど踊っちゃった、が、痛くって――、迚も堪らない。私はこのまま帰るわ、竹村さん、まさか私だと気はつくまいが、何だか恐いわ。だが、どうして切符を手に入れたんだろう、――とにかく、どんなことがあっても今夜の事は秘密よ。お互いに困る事なんだから――」

百合子は心配そうに足許を見て、

「送って行こうか?」

「大丈夫、ひとりで帰れる」

まゆみは足を引摺りながら帰った。

その夜からまゆみは苦しみ出して、翌朝百合子が見舞に行った時にはもう動くことさえ出来なかった。

「ありがとうよ。お蔭様で大変な評判――」

とささやくと、まゆみはにっこりして百合子の手を握った、その手は火のように熱かった。

まゆみの苦悶は日毎に加わった、踏抜きから黴菌が入ったのだが、その釘をどこで踏んだのか誰にも分らなかった。

夜となく、昼となく苦しみつづけて四日目の暁方、まゆみは遂いに死んでしまった。

5

敗血症で死亡したと思われていたまゆみの死因が夫博士によって覆えされた。踏んだ釘にはある恐しい毒薬が塗られてあったことが発見されたのだった。釘を踏んでその傷口から黴菌が入り敗血症になるという事はあり得る。