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さぎむすめ

鷺娘

大倉 燁子

「宝石 一巻四号」1946(昭和21)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,370 字 · 21 页

青空文庫

しかし、それに予め毒薬が塗ってあったとなるとそれは問題だった。

不思議な殺人事件として警視庁内は俄かに緊張した。一人の刑事が慌しく入って来て司法主任の前に報告した。

「舞台で百合子が踊っている真最中に楽屋で百合子を見たという女の子があります。女の子はあの晩から発熱して『お化物が鷺娘を踊っている』と囈言を云いつづけているそうです。家元は家元であの時の踊りが到底百合子の芸ではなかった、とあとで気がついて薄気味悪るく思っていると、まゆみが死んだ、それを聞いて益々怖気づいているという話なんです」

「百合子を調べた結果は?」

「何を訊いてもただ泣くばかりで駄目なんですが、その代り薬剤師の竹村春枝という婦人から参考になる話を大分聞きました。百合子とまゆみは表面非常に仲が好く見えたが、実はお互いに憎しみ合い、嫉妬に燃えていたそうです」

「嫉妬?」

「そうです。光村博士をまゆみに紹介したのは百合子です。女にかけてはなかなか手腕のある博士はうまく百合子を説きつけ、美人のまゆみと結婚しました。その代り競走者であるまゆみの芸を永久に封じるという約束をしたのです、その約束が非常な魅力で、百合子は直ぐ二人の結婚を承知したといいます」