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さぎむすめ
鷺娘
大倉 燁子
「宝石 一巻四号」1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,370 字 · 21 页
て非常に憤慨しています」
司法主任は直ちに竹村春枝を召喚した。
「薬剤師がどういう理で奥座敷の話を立聞きしていたのか?」
「立聞きしていたのではございません。博士のお仕事をしている時お隣りのお部屋の話声を聞いたのでございます。奥様は何も御存じないんですが、百合子さんはほんとに悪い方だと日頃癪にさわっていたものですから、遂いお話を聞いていたのです」
「まゆみの芸を封じる約束をしたという事は誰から聞いたのか?」
竹村はちょっと返事に詰ってうつむいた。
「出鱈目か!」
「いいえ、それはいつか博士が御酒に酔ぱらっていらした時仰しゃいましたんです」
「君はこの犯人を知っているんだな」
竹村は黙っていたが、知らないとは云わなかった。
「知っているなら云ってしまえ、白状しないと反って君に嫌疑がかかるぞ」
びくりとして顔を上げ、きっぱりと、
「百合子さんでございます」
と竹村は云いきった。
「証拠は?」
「百合子さんは奥様を殺して、御自分が博士夫人になるお積りだったのです。釘に毒を塗ってわざと踏むような場所に投げて置いたに違いございません。私は数日前薬局で薬が紛失した時からあの方を怪しいと思い、奥様のお身をよそながら保護して上げる積りで、あの晩も舞台間近かの客席におりましたのです」