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マージャンさつじんじけん

麻雀殺人事件

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,337 字 · 33 页

青空文庫

「さっきの矛盾した事実はこれで説明ができるようだね。みどりは、金と親とに縛られて厭な男と結婚しなけりゃならないのだ」

「それでは、みどりが松山に毒を盛ったとすると、どんな方法によったんでしょうか」と河口警部が反問した。

「松山が気をゆるしているとすれば、彼の湯呑へみどりが毒薬を入れることは訳のないことだ。君、松山のつかった湯呑について分析を頼んでほしいね」

「ちょっと私から申上げますが」と先刻から黙々として卓子の上に表向きにした牌を種類どおりに綺麗に並べあげて、その表をつくづくと眺めていた帆村探偵が言った。

「こう順序よく牌を並べてみて判ったわけですが、ごらんなさい此処に九索という牌が四枚並んでいます。ところでその内の一枚は、他の三枚にくらべて彫刻に塗りこんである絵具が莫迦に色褪せています。一体、牌に水がかかると少し色がはげますが、よくこの牌を見ると、はげたばかりでなく元は赤と青とであったものが、赤は黒くなり、青は黄味を帯びています。これは水ではげたのではなく、何か異物、たとえば他の薬品を塗りつけたことが想像されます。

「ほほう、これは面白い発見だ。すると犯人は麻雀牌の彫りの中に毒薬を塗りこんだというわけですな」