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マージャンさつじんじけん
麻雀殺人事件
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,337 字 · 33 页
そんな下手な殺し方をすれば彼のしたことは直ぐ判明する筈であった。それが判らぬ彼ではないのに、敢えてそうしたのは、急に何か星尾に握られたものがあったのではあるまいか。刑事が行き合わなかったら、星尾はすでに此の世の人でなかったかも知れないのである。
そう考えると、彼は星尾に会って問い訊したいと思った。仕度をすると、直ぐに留置場へ行き星尾に、何か陳べわすれているものはないか、特に電車の中あたりで何か無かったかと尋ねてみた。
星尾は別に大したことはなかったようだ。言いわすれたのは、電車の中で自分が不用意にも下に落した脱脂綿を遽てて拾いあげるところを園部にみられた位のことだと言った。
念のために、川丘みどりを引出して、云い忘れたことはないかと尋ねたところ、彼女は前よりもすこし落付きを見せて答えた。
「わたし、ちょっとしたことを忘れていましたのよ。それは倶楽部で麻雀をうっているとき、不図足の下を見ますと、アノ脱脂綿が落ちていましたもんで、まア恥しいことだと思いソッと拾いあげたんです。それは、もうやめるすこし前のことでした。たしかに拾いあげて袂に入れた筈の脱脂綿が、あとで気がつくとなかったんです」