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マージャンさつじんじけん

麻雀殺人事件

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,337 字 · 33 页

青空文庫

それがために、拇指の腹が痛くなりはしないかと思われた。これは彼の悪い癖である。

第三は、星尾助教授が、大きい和がりに躍りあがって喜んだ拍子に、隣りの園部の湯呑茶碗をひっくりかえしてしまったことだ。大騒ぎになって牌をどかせるやら、濡れたところを拭くやら、新しい卓子布を持ってこさせて、四人が四隅をひっぱって、鋲で卓子へとめるやら、うるさいことであった。一度は、

「吁ッ、痛ッ!」

と松山が大声で叫んだので、みると、指の尖端を口中に入れて舐めていた。なにか乱暴なことをやったものらしい。それを誰かが野次ったものらしくドッと笑声がわきあがったが、どうしたものか、其後一座は、たいへん静かであった。

「どうかしたの、みどりさん。どんな気持なんですか、ええ?」

園部が、その対門にいるみどりを頓狂な声で呼ぶのをきいて、帆村は何とは知らずハッとした。顔をあげてみると、どうしたというのだろう、川丘みどりの顔色が真蒼だった。常から透きとおるように白かった皮膚から、血の気がすっかり引いてしまって、まるで板硝子を重ねておいて、それを覗きこんだような感じがした。園部は、これも青くないとは云えない顔色に、憂るわしげに眉をひそめて、みどりの顔色をのぞきこんでいる。