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おうごんをあびるおんな
黄金を浴びる女
野村 胡堂
「オール読物」1933(昭和8)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,350 字 · 22 页
「それはならぬ」
三之丞も少し驚きました。
「何うしてで御座います」
「あれは、父上のお許が無ければ、誰も入ることが出来ないことになって居るのだよ」
「こんな夜中でも?」
「夜でも昼でも」
「あ、あ」
お駒は投げ出したように言って、クルリと後ろ姿を見せました。
「寝ないか、お駒」
「どうぞ、お休み下さいまし、私は、どうせ眠られはしません」
「弱ったなア」
暫らく言葉が絶えました、が、お駒は身動きもせず、三之丞はその美しい後姿から目を離そうともしませんでした。
「あのお蔵の中には、何が入って居るので御座いましょう」
「さア」
お駒の問が不意だったので、三之丞も少しギョッとしました。
「世間の噂では、大判小判が一杯だと申しますが」
「さア」
「一と目、私に見せては下さいませんか」
「そんな解らぬことを言わずに、眠る工夫をしたら何うだ」
「私はどうせ眠られはしません、こんなに火のように熱いんですもの――」
お駒は三之丞の手を取って、自分の胸へ差し入れました。大して熱いとは思いませんが、高鳴る心臓の鼓動が、男の手に響きます。
「それが何うしたと言うのだ」
「私は、この熱い肌を、金で冷やして見度いので御座います」