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くろねことみ
黒猫十三
大倉 燁子
「キング 一二巻一号」1936(昭和11)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,366 字 · 29 页
彼が親の家を出て、アパート住居をしているのも、女出入に都合が好いためだと聞いていたが、実際はそればかりではなかったのかも知れない。考えれば疑わしい点はいくらでも出て来るのだろうが。
「すると、――辰馬は変名を用い、××会の首領として、活躍しているのですか?」
宮岡警部は底力の籠った声で、重々しく答えた。
「そうです。あの男は女の敵であると同時に我々の敵ですよ」と云って十三の方を見ながら、
「トミーも彼に誘惑されかけた一人なんです」
十三はちらりと宮岡警部の方を流し目で見た。それは美しく澄んだ空色だった、はてな? 空色の眼――殊によると彼女は混血児かな、と心に思った。そう思って見直すと鼻の恰好も、奇麗な唇も、クリーム色の皮膚も、どこやら違っている、それに第一この小柄だのに、洋装がしっくりとよく似合う処など、どうしたって西洋人だ、見れば見るほど着附けも粋で、垢ぬけがしている。
彼女の空色の眼は、またいろいろな表情を現わした、訴えるような、悩ましげな、遣る瀬なさそうな視線は、絶えず動いて彼の頭の中を容赦なく掻き乱した。その一挙一動もまた不思議な力を持って胸に迫った。