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ディーざかのさつじんじけん

D坂の殺人事件

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年1月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,072 字 · 44 页

青空文庫

その時は確か中には電燈がついてました。ですから、少くとも八時頃には、誰れか生きた人間がこの部屋にいたことは明かです」

司法主任が私達の陳述を聞取って、手帳に書留めている間に、警察医は一応死体の検診を済ませていた。彼は私達の言葉のとぎれるのを待って云った。

「絞殺ですね。手でやられたのです。これ御覧なさい。この紫色になっているのが指の痕です。それから、この出血しているのは爪が当った箇所ですよ。拇指の痕が頸の右側についているのを見ると、右手でやったものですね。そうですね。恐らく死後一時間以上はたっていないでしょう。併し、無論もう蘇生の見込はありません」

「上から押えつけたのですね」司法主任が考え考え云った。「併し、それにしては、抵抗した様子がないが……恐らく非常に急激にやったのでしょうね。ひどい力で」

それから、彼は私達の方を向いて、この家の主人はどうしたのだと尋ねた。だが、無論私達が知っている筈はない。そこで、明智は気を利かして、隣家の時計屋の主人を呼んで来た。

司法主任と時計屋の問答は大体次の様なものであった。

「主人はどこへ行ったのかね」

「ここの主人は、毎晩古本の夜店を出しに参りますんで、いつも十二時頃でなきゃ帰って参りません。