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レジグナツィオーンのせつ

Resignation の説

森 鴎外

1909(明治42)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,116 字 · 5 页

青空文庫

そこで私がそう云う諸君の下風に立っていて、何だか不平を懐いているものとでも認められているらしく見えます。私の言うことを愚痴、厭味と極められている意味はそう云う意味かと思います。

おおかたこんなことを言えば、即ちそれが厭味だと云うかも知れません。然らば口を閉じるより外はないようなものです。

所が、私の考えている事は全く違っています。尤もこの考えている事というのが、告白であるかないか、矯飾をしていないかという疑問が直ぐに伴って来る。もっと立ち入って云えば、自分では云々と考えていると思っても、それは自ら欺いている、即ち自己のために自己を矯飾しているのかも知れない。そんな風に穿鑿して見ると、むしろ頭からその考えている事を言わずに置くのが好いかも知れないのです。

しかし何と云われたって、云われついでだから云いましょう。私は田山君のように旨くないと云われても、実際どうでもない。田山君も、正宗君も、島崎君も私より旨くて一向差支がないように感じています。それは私の方が旨くても困りはしません。しかしまずくても構いません。ちっとも不平が無い。諸君と私とを一しょに集めて、小学校のクラスの座順のように並ばせて、私に下座に座ってお辞儀をしろと云うことなら、私は平気でお辞儀をするでしょう。