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Sふじんへのてがみ

S夫人への手紙

岸田 国士

「時事新報」1948(昭和23)年4月1、2、3日、5月3、4、5日、6月18、19、20日、7月12、13、14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,921 字 · 30 页

青空文庫

学生ストの問題に関しては、すでに、南原東大総長の情理をつくした声明もあり、森戸文相の責任ある国会での答弁も公表されていることですから、直接、これについて小生の批判を加える余地はないのですが、もし、強いてこの問題から重要な点を引出すとすれば、森戸文相の言うように、果して「自分の意思を勇気をもつて言える学生が多数いたら、こういう事態にならなかつたろう」か、どうかということです。これは、文相の推測でしようが、そういう推測が実はわれわれを「そうかも知れぬ」と思わせる力をもつている。

しかし、その点にも、今はこれ以上ふれますまい。小生がこの機会に是非、学生諸君だけでなく、多くの青年に理解してもらいたいことは、社会というものは個人と個人との結合であるばかりでなく、団体と団体との有機的な接触から成り立つているもので、一個人は、つねになにかのかたちで、それぞれいくつかの団体に属しているばかりでなく、個人は、またほとんどつねに、その所属する団体を通じて、他の団体と交渉をもつものであるということ。従つて、個人は、自分の所属する団体の正常な機能を分担するうえに、おのずから、いくつかの団体のそれぞれの機能に応じて、自分の能力、義務、目的の合理的な使い分けが必要だということ。