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Sふじんへのてがみ
S夫人への手紙
岸田 国士
「時事新報」1948(昭和23)年4月1、2、3日、5月3、4、5日、6月18、19、20日、7月12、13、14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,921 字 · 30 页
最近某地方自治体の首長らが暴徒の脅迫にあつて、心ならずも職責にもとる行動をとつたという事実ほど、われ/\をガク然とさせ、かつ、冷汗三斗の思いをさせた報道はありません。個人としてはなんぴともこれをわらう資格はありますまい。しかし、ひるがえつて思えば、日本の運命は、数十年来この種の代表者にうか/\と大事を委ねた国民の不明と無関心とにかけられていたのです。
新憲法がいかなる理想をかゝげているにもせよ、その精神を真に生かすものは、われ/\国民の人間としてのほこりと、協同社会につながる自己の役割の認識をおいてほかにありとは考えられません。
そういう意味からいうと、新憲法にうたわれている「平和主義」の観念、軍備を撤廃した国家のすがたについて、われ/\はもうすこし真面目に考えてみなければならぬと思います。「平和的」であることは、もちろん「侵略」の意図などを含まぬのは当然ですが、他の「侵略」に対して、無条件に身を委せることでは断じてないはずです。国としての武装は「平和」の意志表示としてこれをまつたく解いたとしても、国民はそれによつて祖国を守る義務を放棄しなければならぬ道理はないでしよう。