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Sふじんへのてがみ
S夫人への手紙
岸田 国士
「時事新報」1948(昭和23)年4月1、2、3日、5月3、4、5日、6月18、19、20日、7月12、13、14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,921 字 · 30 页
老人はなんと言つても無理かも知れませんが、以上の点さえ解決がつけば、若い連中なら、三度三度パンでもいゝというでしよう。小学校の高学年では、学校給食を通じて、新しい食生活の精神と方法とを体得し、その知識と経験とを各自の家庭に持ち込むわけです。たとえそれが失敗しても、新制中学の女生徒は、やがて主婦となる時、理解ある協力者を男性のうちにみいだすことが容易となるに違いありません。
ところで、粉を常食とする方法はパンには限らぬでしようが、もし、手近にパン屋があつて、必要に応じてそれが手に入るようになつていれば、一番好都合です。現在の配給制度ではむろんそこまでのことは望めますまいが、将来は是非そうありたいものです。
小生の家ではずつと前から、できるだけ米を食わぬようにしていますが、子供たちは、パンが大好物です。しかし、困つたことに、パンの味がわかるにつれて、贅沢にも、パンの出来不出来を批評します。これは、ほんとうは父親たる小生の真似をしているわけで、たいがいにしてもらわぬといけませぬが、誰でも自然そこへ行くはずです。おなじことなら、パン屋さんに、パンとはどんなものかを、すこしは研究してもらいたいと思うことがあります。